オイルクエンチ対策用C/Cコンポジットの開発について

2020年10月19日

オイルクエンチ時のオイルの浸み込みほぼゼロの
炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)を開発

東洋炭素株式会社(以下、当社)は、このたび、一般工業炉や環境・エネルギーなど、産業用に幅広く用いることができる高強度の炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)を新たに開発しました。このC/Cコンポジットを用いることで、熱処理用途におけるオイルクエンチ時のオイルの浸み込みを防止し、品質向上や環境負荷低減に貢献します。今後、1年以内での製品化を目指し、サンプル評価含めた展開を加速して参ります。

従来、C/Cコンポジットは、軽量・高強度・高弾性などの特性を有しています。これにより構成される熱処理用治具は、金属製治具よりもハンドリング性や変形し難い等の点で優れ、使用が拡大しています。このような熱処理用途においては、被処理物(例えば金属製品など)の硬度を高めることを目的として、約900℃に加熱後、急冷する焼入れ処理が広く行われており、急冷する方法は、気体による急冷(ガスクエンチ)や、油による急冷(オイルクエンチ)などが知られています。このオイルクエンチにおいては、C/Cコンポジットにオイルが浸み込んでしまうという問題があり、残留したオイルによって油煙が発生したり、被処理物が着色したりするなど、作業環境や品質に影響を及ぼすといった課題がありました。

このたび、従来の成形技術をさらに発展させ、微小な開気孔を制御することで、高強度でオイルの浸み込みが非常に少なく、酸化消耗の低いC/Cコンポジットの開発に成功しました。

このC/Cコンポジットを用いた熱処理用治具は、オイルクエンチ時のオイルの浸み込みをほぼ100%カットでき、オイルクエンチ後の焼き戻し工程や次回の焼き入れ処理時に油煙の発生を抑制し、工程内の作業環境の改善や、被処理物の品質向上が期待できます。また、ガスクエンチなどの他の冷却方法においても、酸化消耗が抑えられることで治具が長寿命化し、コスト面でも大きく貢献することが期待できます。今後、熱処理用途だけではなく、一般産業用途にも展開していく予定です。

東洋炭素は今後も、コーポレートスローガンである"Inspiration for Innovation"のもと、先端産業を支えるべく、時代を先取りした「カーボンを超えるカーボン」に挑んでいく所存です。

【用語説明】
C/Cコンポジット:炭素繊維強化プラスチックを高温で焼成・熱処理することにより、プラスチックを炭素化した複合材です。
開気孔:物体に含まれる微小な空洞(孔)のうち、外部と接続しているものを開気孔と呼びます。
オイル浸み込み量:100℃に加熱したオイルクエンチ用オイルにサンプルを浸漬、減圧下30分保持後取り出し、表面のオイルを炭化水素系溶剤で洗浄、風乾後秤量し、試験前との質量差から計算。

【生産・販売計画】
生産拠点:詫間事業所(香川県三豊市)
生産予定:2ton /年 (当初1ton/年)
量産開始予定:2021年7月(サンプル配布2020年10月より)

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※上記データは測定例であり、保証値ではありません。
【関連リンク】
熱処理用カーボン製品について


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